ここまでで「騒動まとめ」が参考と引用を混同していることについて既に指摘したが、「騒動まとめ」に不足している著作権知識はそれだけに留まらない。以下は、『Fullpedia』の検証を行うためには最低限必要と思われる著作権法における基礎知識である。
- 著作物内の情報であっても、全ての情報に著作権が発生するわけではない。
――「例えば、登場人物の『性格』や『名称』などは著作権の保護対象ではありません」(『著作権入門』)
- 著作物内の情報であるかないかに関わらず、「単なるデータや事実」には著作権が発生しない。
――「『東京タワーの高さ:333メートル』といった『単なるデータ』など(人の思想や感情を伴わないもの)が著作物から除かれます。」(『著作権入門』)
- 扱う情報が「単なるデータや事実」であっても、「編集物でその素材の選択又は配列によって創造性を有するものは、著作物」として保護される。(著作権法12条1項)
――「詩歌、百科事典、新聞、雑誌のような」(『著作権法入門』)
――「『選択』は誰が行っても同じだが、『配列』に工夫がなされている例として、特定地域の事業所の電話番号を網羅しつつも、職業別に編集した電話帳などが挙げられよう。」(『著作権が明解になる10章』)
- 編集の対象が著作物であっても、前述の保護は適用され、なおかつ
「編集物の部分を構成する著作物の著作者の権利に影響を及ぼすようなことはない(同条第2項)」(『標準編集必携』)
これを『Fullpedia』の例に引き合わせると、著作権の専門家であるかないかに関わらず、一般的に何人にも以下のような判断が可能となる。
- 『Mr.FULLSWING』は著作物であるが、その中の「バット」や「野球のルール」といった語句・規則はもちろん、「猿野天国」といったキャラクター名や、「スケベ」「芸人気質」といった性格にも著作権がない。
- 「猿野が犬飼につけたあだ名のひとつは『犬ッコロ』」といった、「単なるデータ」のひとつひとつには著作権が発生しない。
- しかし、それらの「あだ名」というデータを「猿野が犬飼につけたあだ名」という観点から取りまとめた『Fullpedia』内の記述部分は、『Fullpedia』の編者に著作権が発生する。
(補足:「著作権は『無方式主義』といって、申請や登録を行わなくても、著作物を創作した時点で自動的に創作した者に著作権が与えられ」[『著作権入門』]るため、「(告訴があった場合は)係争に持ち込むことなく(発行を停止する)」とする主催の意図とは無関係に、著作権は発生する。)
- 『Fullpedia』もしくはその内部の記述に著作権が発生し、その著作権を『Fullpedia』編者が有しても、そのことで『Mr.FULLSWING』やその関連書著作者の著作権は一切侵害されない。
最終更新:2013年03月10日 06:38