引用と参考の違い

※以下の解説は全て「簡単にアクセス可能な範囲での情報」を前提とする場合に限って整理した、「ごく一般的な資料利用方法への認識」の確認を目的としたものである。
厳密な法解釈の提示を目的とするものではないことをご了承の上ご覧頂きたい。
※また、「引用」と違い「参考」に著作権法上の明確な定義はないため、慣習として行われている「参考」のうち、今回の問題に沿うものをいくつか例示した。



★原文★
哲学に入る門は到る処にある。諸君は、諸君が現実におかれている状況に従って、めいめいその門を見出すことができるであろう。ここに示されたのは哲学に入る多くの門の一つに過ぎぬ。しかし諸君がいかなる門から入るにしても、もし諸君が哲学について未知であるなら、諸君には案内が必要であろう。この書はその一つの案内であろうとするものである。
(『哲学入門』三木清/初版発行日1967年4月17日/
青空文庫


★引用★
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「哲学に入る門は到る処にある。諸君は、諸君が現実におかれている状況に従って、めいめいその門を見出すことができるであろう。」(『哲学入門』三木清/初版発行1967年/青空文庫)

と三木清はしているが、私の見解は三木清とは多少異なる。というのも……
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※以下、引用部分より質的にも量的にも自分の研究もしくは主張がメインとなっていなければならない。『一般的に知られる引用の利用法』としては、引用部分に改変を行ってはならず、自分の文章とも分ける必要がある。


★参考1★
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『哲学入門』における[哲学]の語句の出現部分は、以下の通りである。(句点を区切りとして1文と数える)
・1文目
・3文目
・4行目……

◎参考文献
『哲学入門』三木清/初版発行日1967(昭和42)年4月17日/青空文庫
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※この場合『哲学入門』は参考文献であり、引用には当たらない。「『哲学入門』における[哲学]の語句の出現部分」自体は“客観的な事実(そのもの)”に当たり、その情報のひとつひとつに著作権は発生しない。しかしこれらを体系化した研究が独自のものであるならば、その研究を行った者が、上記文章の著作権を得る。(参考文献の著作者にその研究の著作権は発生しない)

これを引用とするためには、「『哲学入門』における[哲学]の語句の出現部分をまとめた研究」が既に存在しており、
「『哲学入門』における[哲学]の語句の出現部分は、以下の通りである。(句点を区切りとして1文と数える)
・1文目
・3文目
・4行目……」
という部分と同一の表記が既出の研究に掲載されている場合のみである。
この場合、研究対象である参考文献を明記していても、引用元であるその研究について明記しなければ、盗用や無断転載の類となる。


★参考2★
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『哲学入門』の記述によると、三木清の生い立ちは以下のようにまとめられる。
生年:…
出身:…
経歴:…


◎参考文献
『哲学入門』三木清/青空文庫/初版発行1967年
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※この場合も『哲学入門』は参考文献。『哲学入門』内に関連情報が散在しており、「生い立ち」という切り口からの情報のまとめ方が存在しなければ、『哲学入門』を情報源としていても、引用にはあたらない。(上記は単なる例で、『哲学入門』に三木清の生い立ちに関わる記述はないはずなので誤解なきよう。)


★参考?引用?★
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『哲学入門』の記述によると、三木清の哲学に対する思想は以下のとおりである。

…(ほぼ内容の要約)…

今後の三木清研究の発展に期待したい。


◎参考文献
『哲学入門』三木清/青空文庫/初版発行1967年
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※通常、この場合も『哲学入門』は参考文献として扱われることが多いように思われる。研究としての価値が認められる可能性は著しく低いものの、大学レベルまでではこのような内容のレポート・論文が数多く存在する。
その場合も参考文献の明記さえあれば即盗用とみなされる例はごく少数と考えられるが、参考文献の明記を欠くと盗用とみなされ、単位の失格や停学など厳しい処分を受ける対象となる。
※なお、このページ内で想定しているごく初歩的な著作物の利用法認識からは逸脱する可能性が高いが、これに関しては「翻訳による引用」と解釈される可能性も存在する。これは「引用の要件に合致する場合には、翻訳して利用することができる」(『全訂版 著作権が明解になる10章』より引用)とした引用法で、「原文を要約して引用することについては、これを許容する明文の規定はないが、要約引用も認められるとした判例がある(東京地裁平成10年10月30日判決「血液型と性格」事件)」(前述書より引用)。

具体的な事例が両者のいずれに合致するかについては、司法の判断に任せるしかない。




参考:『弁護士ドットコム』
参考と引用の違いについて
他、参考文献一覧を参照のこと。


 

最終更新:2013年03月09日 22:23