「――ねぇ夕真、殺してもいい?」
覚えている、愛している人がいた。
覚えている、その人になら殺されてもいいと思った。
覚えている、貴方の指が私の首を絞めつけるのを。
覚えていない、貴方が誰だったか。
覚えていない、何故あなたは私を殺そうとしたのか。
覚えていない、私は本当に死んだのか。
目を覚ますと、あなたは居なくて、あなたとの思い出も無くしていて、こぼした涙すら床をすり抜け深く地中へと飲み込まれた。
幽体を得た私は、死んだ意味も知らず、もしくは無駄に生きたまま、この現を彷徨っている。
最終更新:2013年07月27日 21:33