流血少女エピソード-人形遣い-

深夜。雨。
 全裸体の豊満な少女の胸に風穴が空いている。
 穴をじぃっと見る少女の顔は全くの無表情。
「生きているのか?」
 その疑問は彼女自身から発されたものだ。

 明らかに心臓が存在しないであろう彼女がなぜ生きているのだろう?
 鋼鉄が擦れ合う音がして、銀色が瞬時に穴を塞がる。
 肉体をワイヤー化し、ワイヤーを肉体化することで体内に心臓はいくつでも作れる。
 少女は突如、右手を巨大な男性器に改造し、己の目玉を押しつぶした。

 少女は痛みを感じるか、シナプスをOFFにすることで抑えられる。
 すると暗黒の世界や無音の世界と同じ「喪失感」が彼女を包む。
「死んでいるのか?」

 彼女がそうつぶやいたのは、脳味噌の3割をミンチ状に変えてからだった。
 男性器はヤマアラシのように短い鋼鉄が伸びており、ぐりぐりと回すと、もはや死ぬは必死である。
 シナプスを繰り、痛みに喘ぐ。
 極小ワイヤー〈自由意思のウロボロス〉で首を根元から断つ。あまりに鮮やかな切筋は、血すらにじみ出ないほどだ。切れたかどうか確かめるように、首級を持ち上げる。あっけないほど胴体と首とは離れた。
 しばらくそうしたあとに、ふと虚しくなって復元する。赤色が銀色に変わり、刺し、つながり、整う。
 ワイヤーという〈線〉があれば、いかなる〈面〉も再現できる。彼女はそう考えている。
 完全無欠の肉体。
 人形のような。
「心はどこにあるんだ?」
 長い息を吐き、少女は目を閉じる。


最終更新:2013年07月26日 21:41