第0章 電磁気学とは

電磁気学で学ぶこと

物質(間)の相互作用とふるまいが知りたい
⇒ 電荷と電磁場の相互作用が分かればOK
⇒ 電荷は電磁場に従い、電磁場はマクスウェル方程式に従う
⇒ マクスウェル方程式を理解しよう

用語の詳細は後述。

諸注意
  • 基本的に真空中*[1]で考える。
  • もともと知りたかったのは物質間の相互作用(移動とかエネルギーとか力とか)。それを説明するのに「電荷」と「電磁場」を考えるようになり、結局のところは「電磁場」(※電磁”波”じゃないよ!)にいきつく。 そしてそこから「電磁波」とかいろいろなものが理解できるように。
  • 電子とか出てきて、「ミクロスケールの話?じゃあ量子論?」などということはとりあえず考える必要はない。電子のふるまいは仮定に落とし込めばよいだけなのだから(そしてその仮定は(電磁気学のスケールにおいて)実測値との一致が正しさを保障している)。
  • もちろん、電磁気学を学んでいけばそこから量子論への道が続いているし、その他の物理学にもつながっていく。

なにはともあれ、マクスウェル(Maxwell)方程式をみてみよう。

\nabla \cdot \boldsymbol{D} = {\rho}

 \nabla \cdot \boldsymbol{B} = 0

\nabla \times \boldsymbol{E} = -\frac{\partial\boldsymbol{B}} {\partial t}
\nabla \times \boldsymbol{H} = \boldsymbol{i} + \frac{\partial\boldsymbol{D}}{\partial t}


これら4つの式の総称がマクスウェル方程式である。
{\footnotesize \boldsymbol{D}}は電束密度、{\footnotesize \boldsymbol{B}}は磁束密度、{\footnotesize \boldsymbol{E}}は電場、{\footnotesize \boldsymbol{H}}は磁場、{\footnotesize {\rho}}は電荷密度、{\footnotesize \boldsymbol{i}}は電流密度

上の式は次のようにも書ける。

{\footnotesize \operatorname{div}\boldsymbol{D} = {\rho}}
{\footnotesize \operatorname{div} \boldsymbol{B} = 0}
{\footnotesize \operatorname{rot}\boldsymbol{E} = -\frac{\partial\boldsymbol{B}} {\partial t}}
{\footnotesize \operatorname{rot}\boldsymbol{H} = \boldsymbol{i} + \frac{\partial\boldsymbol{D}}{\partial t}}

とりあえず、電磁気に関する現象がこの4つの方程式で表されるらしいということをここでは知っておこう。

この基本方程式は、種々の実験結果から得られたいくつかの法則より類推して得られたものである。すなわちマクスウェル方程式は他の法則から数学的な意味で完全に論理的に求められるものではない。
言い換えると、マクスウェル方程式こそが電磁気学の基本法則を表すものであり「なぜこの世界はこの方程式に従うのか」というのは(電磁気を学ぶにあたっては)問うてはいけない。我々がここで問えるのはせいぜい「どういう実験結果(観測事実)のもと、どういう発想でこの方程式を得られるのか」ということである。




[1]実は実際の空気中(大気中)でも挙動はあまり変わらない。じゃあどこでも同じかというとそうでもない。後に出てくる「真空の誘電率」「真空の透磁率」がカギ。
最終更新:2012年12月07日 05:37